【八ヶ岳】赤岳、真冬の八ヶ岳主峰を歩く雪山登山の旅
2018年1月4日、南八ヶ岳に聳え立つ八ヶ岳主峰「赤岳」に行って来ました。
2017年の夏、秋と登り続けて来た山で、標高は2,899m。
今回は年末年始の冬シーズン、雪の赤岳登山となります。
年末年始は積雪があり、コンディションはまさしく冬。
よく山岳雑誌などで冬のシーズンになると雪山特集が組まれますが、
必ず紹介されるのが冬の赤岳、冬シーズンの憧れの山として毎年その名前を見ます。
僕も冬山を歩き続けていつかは赤岳登りたいなと考えていたところがあり
ついにそれを実行に移すことができました、
今回の冬の赤岳はとても気持ちのいい登山だったのは間違いありません。
冬に歩いた八ヶ岳エリアの山は天狗岳、権現岳、硫黄岳、蓼科山、
ここまで来たら次は赤岳ということで、今回は入念な準備をして八ヶ岳へ向かいました。
コンディションは無風快晴で抜群の天気、年明けの赤岳登山の旅の始まりです。
積雪期の赤岳登山について
雪山は基本危ないです、赤岳は初心者が行くと危ないです。
赤岳は岩場が多く歩きにくい地形をしています。
なるべくなら複数人のパーティーを組んだりして極力リスクを減らすようにしたいです。
一人で歩かざるを得ない場合は入念な情報収拾や装備などの下準備、
そして雪山の経験をしっかりと積んでおくことが大事です。
雪山は雪のコンディションによって難易度や危険度がコロコロ変わります。
雪の量が近年少ないとは言われ、12月、1月、2月で登山道の状況がかなり違います、
登る前に積雪量や天候をよく調べ、自分の歩けるコンディションを見極めたいところです。
今回はソロでの登山となったため、一番歩きやすいであろう年末年始を狙いました。
コースは登りで文三郎尾根を使い、下りで地蔵尾根を利用しています。
結果としては冬季の地蔵尾根は結構危なかったなという感想です。
この日は天候がよく、とてもきれいな阿弥陀岳を眺めることができました。
日帰りの赤岳登山は達成感はあるのですが、樹林歩きが長いため楽しみが少ないです。
次回歩くのならば山荘で宿泊して夕陽や朝焼けの撮影をしてみたいと思います。
- 1.赤岳雪山日帰り登山に関して
- 2.雪の八ヶ岳、行者小屋までの長い道のり
- 3.文三郎尾根、絶景の阿弥陀岳と共に
- 4.主峰赤岳、冬の集大成を刻む
- 5.地蔵尾根、肝を冷やす急なあいつ
- 6.下山、アイスキャンディと林道歩き
- 7.まとめ
1.赤岳雪山日帰り登山に関して
美濃戸口へのアクセス
電車でアクセスする方法
【電車】新宿→茅野 3,350円
【バス】茅野→美濃戸口 930円
【バス】美濃戸口→茅野 930円
【電車】茅野→新宿 3,350円
合計運賃 8,560円 冬季は特定の日しかバスが動いてません、下記を参照。
Access Shinshu アルピコグループのバスポータルサイト
車でアクセスする方法
冬に赤岳山荘まで行く場合は4WD+チェーンが確実です。
僕はFF車+スタッドレスなので美濃戸に車を置きました。
【高速】浦和南→小淵沢 5,550円/3,830円(一般/ETC)
往復交通費 11,100円/7,660円+ガソリン代金4,000円くらい
赤岳登山のコースタイム
八ヶ岳山荘6:30→赤岳山荘7:20→行者小屋8:50-9:15→赤岳山頂10:50-11:40→
赤岳天望荘12:10→地蔵の頭12:15-12:35→行者小屋13:20→
赤岳鉱泉13:45→赤岳山荘15:00→八ヶ岳山荘15:45
合計登山時間 9時間15分 山頂でもう少しのんびりしたかったですね。
この登山で使用したお金
高速往路 2,700円
高速復路 2,700円
ガス代 4,400円
駐車料金 500円
入浴料 500円
水 300円
行動食 600円
合計金額 11,700円 できればどこかに泊まりたかった。
この登山で使用したカメラ
NIKON D850+AF-S NIKKOR 28mmf1.4E
NIKON D810+AF-S NIKKOR 58mmf1.4G
D850のシャッターユニットの優秀さがよくわかる登山でした、全然ブレねぇ。
2.雪の八ヶ岳、行者小屋までの長い道のり
2018年1月4日午前4時15分、談合坂SA。
二日前の竜ヶ岳から続いての中央道スタートです、
「今日は赤岳に登るので談合坂でスタ丼食べてしっかり体力つけないとね!」
ということで意気揚々とした気持ちで談合坂SAに来ました。
登山の際はやっぱり米です、体力の持ちが違うよねって思う。
いつも談合坂でスタ丼大盛り食べると
その日のお昼くらいまでは空腹にならないから便利です。(個人の感想です)
午前6時30分、八ヶ岳山荘前駐車場到着。
早朝から開店している八ヶ岳山荘。
この明かりが見えると人がいるんだなと思いほっと安心します。
冬の期間中、ほとんどの人は八ヶ岳山荘前の駐車場に車を停め
赤岳山荘までの林道を片道40分~1時間くらい歩くことになるかなと思います。
赤岳山荘まで行くなら四駆+スタッドレス、さらに金属チェーンがあれば確実でしょう。
「赤岳山荘まで行けそうな気もするけど……、今日は歩くか……」
ということで薄暗い森の中を歩くことにします、
この林道で片道1時間くらいの時間がかかるので、なるべく早く歩いて時間を稼ぎます。
歩く場合はショートカットできる道があるので、
それを利用すると結構早く赤岳山荘までたどり着けます。
車道に出てみると路面状況は快適、今日なら車ではいれたなぁ……。
そう思う僕の隣を三菱デリカD5がものすごい勢いで走り抜けていきました。
憧れるぜデリカD5……。
次車を買うなら絶対に四駆です。
午前7時10分、赤岳山荘付近。
気持ちが前に前にと出て来て足が止まりません、
早く稜線に出たくてたまらない気持ちを押さえて歩きます。
やまのこ村は営業しているのかわからないけど、赤岳山荘は営業中。
赤岳山荘は色々な装備を売ってくれる最後の砦です、
八ヶ岳ってスゲーなという気持ちにさせてくれる品揃え。
「靴下」とか「バラクラバ」があるので、いざというときはお世話になりたい。
ちなみに前回靴下が片方だけない事件の際はお世話になりました。
冬でもソフトクリーム食べたいな!と言いながら温度計チェック。
-15度付近なので暖かいですね、太陽が出てきたらかなり暑くなりそうです。
やまのこ村の手前にはなにやら氷壁が……、まだ作成中で大きくなっている途中でした。
これアイスキャンディーになるのかな?
なにか買うわけではないのでさらっと進みます、いつもの橋も雪化粧です。
ちなみに日帰り赤岳登山ですが、稜線に到着するまで登山道がずっと日陰です。
午前7時15分、年始の赤岳登山開始です。
いつも通り南沢を利用して行者小屋に向かいます。
赤岳といえば年越しの赤岳天望荘が有名です、今年も大勢の登山客が訪れたようで
地面はそういった方々のトレースがガッチリついていました。
今回一人で歩くことを考えて、知ってる道に確実にトレースついてて楽に歩ける日
ということでこの日を狙っていたけど正解だった。
基本夏道をぐんぐん進みます。
川は凍結しているため、登山道を歩く自分の音だけが辺りに木霊する。
「今年はまだ積雪が少ないですよ」
事前に電話したりして聞いておいたけども本当に雪が少なかったらしい、
この後二月になったら結構積もったみたいだけども。
僕が歩いた年始のタイミングでは積雪が凄いというような状況ではなかった。
「白翡翠みたいな氷だな!」
いつもならザバザバと音を立てて流れている川は宝石の原石みたいに凍っていました。
アイゼンで蹴っても爪が刺さらないくらい硬く引き締まっている。
明け方は氷の成長みたいなのが沢山見れて楽しい時間です。
もくもくと進みます、この最初の樹林がけっこう長い。
道も細くて歩きにくい、北沢の方が速度が出そう。
川がきれいに凍ってますね。
川沿いを越えて辺りが広がると行者小屋が近い合図です。
雪化粧した美しい樹林の中を進みます。
この辺は雪が新しく、歩くたびに足元からギュッギュッと音が聞こえて楽しかったです。
辺りは真っ白ですが日陰、早く太陽の光が浴びたいので速度をあげて歩きます。
樹林を抜けると雪煙を上げる山々の姿が眼に飛び込んできます、
八ヶ岳がようやく姿を見せてくれました。
針葉樹がウチワサボテンみたいになっとる……、
あるいはミッキーマウスの手みたいな感じか。
3.文三郎尾根、絶景の阿弥陀岳と共に
午前8時50分、行者小屋到着。
ようやく行者小屋につきました、赤岳の日陰になってるお陰で大分冷え込んでいるようです。
でも心がホットなので全然OK。
行者小屋で第一次大戦位の登山装備のコスプレして登ってる人がいて
談笑していたりしていました、写真も載せていいと快諾してくれてすごかった。
とりあえずトイレを済ませてアイゼンを装備してすぐに出発です。
今日は文三郎尾根を登りに使います。
前日までのコンディションなどを踏まえ、登り文三郎、下り地蔵にしました。
ドキドキしながら文三郎尾根に向かいます、その時カメラにふと目をやると……。
「あれ、カメラしばれてる……」
僕の体から上がった湯気がカメラの表面を凍らせてしまったようです。
まぁ、ニコンだから大丈夫だろうと思い登山を続けました、
実際ニコン機はこれくらいの環境ではなんともない。
バッテリーも僕の歩いた雪山では全て通常通りに持ってるし、堅牢性No1。
文三郎尾根はまず樹林を登る、トレースあるおかげでアイゼンもサクサク刺さって楽しい。
時おり見える景色は光と影がはっきりと別れている。
早く光のある方へと這い出たいという欲求が高まる。
すぐに階段が現れるのですが、皆階段ではなくその隣を歩いていました。
階段は変な雪の付きかたしてて歩きにくいんだろうな……。
階段が埋まりきるほどの雪がない時期です、基本夏道を登る感じ。
文三郎尾根はこの辺の一気に標高上げるところが辛いのですが、
景色がだんだん良くなっていくという楽しい要素もあります。
右手に鎮座する阿弥陀岳!
これが文三郎尾根を歩いていてとても楽しい景色です、
僕のような一般登山者では中々冬の阿弥陀岳何て登ることはないだろうけど。
左手側は横岳と硫黄岳の景色。
横岳ですがここから見るとそんなに大きな山には見えません、
しかし歩いてみると意外と通過に時間がかかる山だったなという思い出。
横岳の山頂はここから見えるピークではなく奥にあった思い出、
積雪期はナイフリッジの形成等で危険ということだったので歩く予定はありません。
文三郎尾根の階段に苛まれながらゆっくりと足を進めます、
一気に上がると疲れちゃうのでとてもゆっくり。
少し登る度に阿弥陀岳の景色が変わっていく、マジで立派な山だと思う。
振り返ると諏訪湖まで見渡せるいい天気でした、
眼下には赤岳の影が落ちてツートンカラーの風景が生まれている。
何度も横岳と阿弥陀岳を見て進む。
あれが大同心でその隣が小同心だよなーとぼんやりと考えながら尾根を登ります。
この景色を見ること以外やることがないんですねこの尾根。
画面右上の稜線に出ると赤岳山頂へのアプローチが始まるのですが、
そこに行くまでが長くて大変。
登る度にわかるのは赤岳表面の岩の険しさ、
白黒の細かいコントラストが若干グロテスクな風景を産み出していました。
バチィッと撮れると本当にかっこいい阿弥陀岳。
標高が上がってくると手前の中岳と同じくらいのところに並びますが、
中岳は阿弥陀岳より全然小さい山です。
並べてみると立派な山が二つ並んでいるように見えるマジック。
実際に歩くと中岳は道中の丘って感じだった思い出。
気持ち硫黄岳方面から雲が流れてきているらしい、
曇る前に山頂に立てるといいなと思いながら足を進める。
岩に雪がこびりついた斜面、迫力があります。
落石などが起こる可能性もあるため、早く抜けていきたい。
急峻な斜面を牛歩の速度で上がります、風は全くの無風。
稜線に出たら寒いかなと思っていたのですが、そんなに寒くなさそうです。
稜線に出た証明ともなる指導標が見えてきました、
ここまで来たら赤岳登山の前半戦が終了です。
早く太陽の光を体に吸収したくてたまりません。
稜線手前から見た阿弥陀岳、本当にいい男です、ウホッいい山。
夏道はこの時期かなりの難易度というか、とても怖いことになっているんだろう。
午前10時15分、稜線到着。
文三郎尾根の稜線部分に到着しました、太陽の光が一気に降り注ぐ。
それと同時に東側から吹き付ける風が体を打ち付けます。
「うわぁ、風つめたっ!」
思わず呟き、バラクラバを目元まで押し上げました。
文三郎尾根の景色はとてもいいです。
阿弥陀岳の景色を背負いながら登るのですが、
振り返る度ににっこりと笑いたくなるような景色が広がります。
ここの景色は夏よりも冬が好き、真っ白な阿弥陀岳は本当にかっこいい。
山頂直下の岩場に到着するまではザレ場をつづら折りで登る夏道コースをたどりました。
先行の方々の体力スゲーなと思いながらゆっくりと登ります。
この日は天気がよく、南アルプスもくっきりと見えた。
白く染まった3,000mクラスの稜線がカッコいいですね!
気持ちのいい雪山登山が続きます。
調べておいた通り夏道が使えるので安心して歩くことができました。
上を見上げると迫力満点の景色が広がる。
強風にさらされ岩にこびりついた雪は海老の尻尾状になっていました。
風が強すぎて雪もたいして積もらないみたい。
まだ積雪は少ないことと、前日も晴れていたのでこういう岩についた氷は小さい状態。
発達したら安達太良山とかで見たカニの剥き身みたいになるんだろうな。
太陽が早く上がってこいと言っているようだ。
文三郎尾根の岩場地点が近づいてきました。
此処からが気合いをいれる地点です、夏でも歩きにくい岩場なので冬は細心の注意が必要。
「やっぱ、雪少ない……」
雪は積もりきっておらず、地面に凍結した氷としてこびりついていました。
おかげでアイゼンがよく噛み合うので登りやすさはバッチリです。
上に行くとこのような感じに、ピッケルとアイゼンを効かせて三点を意識して登ります。
とにかくよく見る、ぼんやりとして登ると危ないので落ち着いて、よく見て登ります。
夏場も振り向くとストーンとした景色でしたが、
もちろん冬もストーンとした景色が広がっています。
ここの岩場でロープを下手につかむと危ないので、
動かない岩とか大地の力を使って登ることを意識しました。
岩場の核心部を越えて稜線へ出ると綺麗な景色が目の前に広がります、凄い迫力だ。
夏以上の迫力です、雪のつき方が左右で違うんですね。
山頂はすぐそこです、梯子を登って山頂を目指します。
「あ、富士山……」
目の前の雲が邪魔ですが富士山が見えます、
少し霞んだ景色の向こうにスラッと浮かび上がる景色はやっぱりきれいだな。
南アルプス方面は雲ひとつない景色が広がっている。
眼下に広がる稜線の迫力は半端ないものでした、この先にある権現岳は昨年歩きましたが
ついに赤岳から権現岳を見ることができました。
赤岳から眺める阿弥陀岳。
さっきまであんなに大きかった阿弥陀岳が眼下に広がっていてなんか不思議。
4.主峰赤岳、冬の集大成を刻む
午前10時50分、赤岳山頂到着。
ようやく赤岳の山頂に到着しました、達成感が凄い。
下準備にとても時間をかけたこともあり、登れた時は本当に嬉しかったです。
そしてなんか夏、秋、冬と赤岳に来たことに笑いが込み上げてきていました。
山頂からの富士山は格別です、格別ですが雲に飲まれようとしている……。
このショットを撮影後、富士山が姿を見せることはありませんでした。
南アルプスは晴れてるけど北アルプスは曇っているみたいですね……。
山頂は人がまばらで、景色をゆっくりと楽しむ余裕がありました。
コースタイムを巻いて登れので山頂でゆっくりとプロテインバーを食べることにします。
赤岳山頂記念ダッフィー。
ダッフィーを出したら、ブログを読んでいる方から声をかけて貰えるという嬉しい出来事が。
毎回読んでいただいて本当に感謝です。
横岳、硫黄岳方面は雲に遮られて日陰になっているようでした。
赤岳付近はまだ雲の影響を受けていませんが時間の問題です。
山頂で見たかった景色はだいたい観れたので下山に移ります。
阿弥陀岳の画面右斜め上にあるのは霧ヶ峰か、諏訪も綺麗に見えるけど雲が少し邪魔です。
冬の霧ヶ峰や美ヶ原は霧氷の写真をよく見かけます。
明け方に合わせて歩くことによって写真を撮ったりしているのかな?
少し前まで休憩していた行者小屋や赤岳鉱泉が遥か下に見えます。
この辺で温泉に入って帰りたいなーという思いが強く湧いてくる。
登山中、山頂に立った瞬間猛烈に風呂入って布団で寝たくなるのはなんなんだろう。
山頂に別れを告げて下山に移ります、赤岳はとても好きな山なのでまた来年。
次は東側から歩いてみたいですね。
文三郎尾根側からの景色も随分と雲が多くなってきました。
それまで見えていた遠景は雲の向こう側へ。
午前11時40分、赤岳頂上山荘。
一時間くらい山頂付近をうろうろしていたようです、狭いのによくいたな。
赤岳頂上山荘は冬は営業していません、一つ下の赤岳天望荘は営業しています。
帰り道は地蔵尾根なので天望荘へ向かって歩きます。
さて、赤岳で僕が一番嫌なのがこの頂上山荘から天望荘までの斜面。
夏も非常に歩きにくかったのですが、冬もさぞかし歩きにくいだろうなと覚悟していました。
結果はというと、やっぱり歩きにくかったです。
ここの歩きにくさは夏は「砂利が滑る」、冬は「傾斜がと変に露出した石」にあるのかなと。
階段状についたトレースを使わせていただきつつ、慎重に降りて行きました。
硫黄岳は相変わらず雲の下、今僕のいるところだけが晴れている感じです。
稜線に長居するのは危険なのでとっとと下山してしまいましょう。
岩を回避して左に回り込む夏道、ここは冬だとなかなか気合が入るところでした。
何かの拍子に左側に体が傾けば大変なことになります、なので慎重に歩きます。
天望荘が見えてきました、ここまでくれば特に難所はありません。
足を滑らせて転んだりしないように、アイゼンを地面にガッチリと噛ませて降りて行くのみ。
近そうに見えてなかなかすぐにつかないのもここの嫌なところ。
地図で確認しても距離に対して結構コースタイムがあるんですよね。
ついに稜線全体が影に覆われてしまいました……、なんてこったい。
先程までの山頂の晴れやかな青空が嘘のようです。
「曇ったなぁ……、残念だなぁ……」
心底残念な気持ちになっていたのですが、天望荘の裏口についたあたりで顔をあげると
雲がすごい速度で流れているのに気がつきました、そしてすごい勢いで太陽が姿を表す。
「なんだよイケメンかよ……」
振り向いた僕の目にはかっこいい赤岳頂上の三角形がしっかりと映し出されていました。
しばらく流れてゆく雲、太陽、山頂を眺めていました。
ここで眺めていた景色は本当に綺麗で、下界で起こったことがどうでもよく思えるものだった。
「納期とか上司とか家庭とかそういうの忘れて、俺とダンスしよ」って山が言ってる。
さて、ボケーっと山頂を眺めていては下山できなくなります。
地蔵尾根を目指して進んで行きましょう。
僕と同じタイミングで歩いていた多くの人は天望荘へ吸い込まれて行きました。
冬の間でも泊まることができる貴重な山荘ということで、赤岳は人気なんでしょうね。
地蔵尾根へ向かう道は風が強いのか、融雪したのか、雪があまり見られませんでした。
振り返れば赤岳と天望荘、この景色がとても好きです。
赤岳をこの位置から見るのと、硫黄岳から見るのがとても好き。
これ以外にも赤岳をかっこよく見れるところがあったらぜひ教えて欲しい。
午後12時15分、地蔵の頭到着。
地蔵尾根の稜線側に到着しました、ここから下山を開始するのですが
ここから見る赤岳ってかっこいいから、ちょっと太陽を待って撮影してみたいとおもう。
というわけで太陽が顔を見せるまでバッファとして稼ぎ出した時間をここで使います。
なかなか太陽が顔を見せない、そんな時は阿弥陀岳を撮ればいい。
地蔵の頭から見る阿弥陀岳もまたかっこいいのです。
と言いつつも西から吹き付ける風がきつい、太陽早く顔だして。
なかなか顔を出さない太陽、雲と青空と赤岳を撮影しようとして粘った20分でした。
なかなか赤岳に日が当たらず。
帰ろうかなと諦めかけたタイミングで太陽が現れ、綺麗な一枚を撮らせてもらえました。
太陽が出ている写真が撮れて満足したので下山します。
5.地蔵尾根、肝を冷やす急なあいつ
午後12時30分、地蔵尾根降下開始。
「冬の地蔵尾根は傾斜がきついし滑落の危険が高い、雪崩も起きるから気をつけて」
事前にそう言われていたので警戒心MAXで降ります。
下から続々と人が上がってくる、お正月休みの八ヶ岳ってやっぱり人が多いんですね。
まだ鎖が出ている冬の時期でした、夏も「急だな」と思って歩いていたけど
冬になるとなおのこと警戒心が強くなるルートだ。
文三郎尾根は阿弥陀岳を見るコース、地蔵尾根は赤岳を見るコースです。
下山中はご覧のようにかっこいい赤岳が常に視界に入ってくる状況
最高に「ハイ!」ってやつだアアアアア。
冬のこの景色が見れて本当に嬉しい限りです。
どうしても登りたかった雪の赤岳に登れて満足、山に別れを告げて下山します。
地蔵尾根ですが、傾斜の関係上積雪が多くなると僕はこの道を使えなくなるでしょう。
登りでも下りでも、雪崩が起きそうな傾斜です。
下山のタイミングで雲が晴れてゆく八ヶ岳、遠くの蓼科山もしっかりと見える。
下から地蔵尾根を見上げるとこんな感じです、登りも登りできつそうな傾斜。
油断して転ぶとすごい落ちて行くと思うので、ここは怖いと思う。
水墨画のような白黒の景色に染め上がる赤岳、主峰の威厳がある。
九十九折に地蔵尾根を下って行きます、だんだん行者小屋が近づいて来た。
場所によっては岩と雪のミックスで歩きにくいところも。
アイゼンを引っ掛けて転ばないよう、足元に注意して降りてゆく。
標高を下げるとまた阿弥陀岳の主張が強くなって来ました。
赤岳の整った面持ちに比べると阿弥陀岳はマッシブな姿に見える
登り道もちょっとマッチョな山です、夏でも怖い登山道なのでオススメしません。
小屋まで一直線に伸びる登山道を歩いてみるみるうちに標高が下がってゆく。
「そういえばアイスキャンディ見たことないから見たいな……」
いきなり思いついたので帰りは赤岳鉱泉から北沢を経由して帰ることにしました。
斜面もだいぶマイルドになり、非常に歩きやすくなりました。
地蔵尾根の半分から下は樹林なので、その近くまでくれば歩きやすくなります。
横岳方面も晴れたようです、奥に大同心っぽいのがニョキっと見える。
クライマーの方々が登られるのはあの辺なのかな。
階段手前の傾斜がやや急でした、ピッケル片手に慎重に降りる。
斜面で勢いづいてしまわないように慎重にブレーキをかけて、焦らずゆっくりと下山します。
「階段の網目にアイゼン刺さって歩きにくい……」
階段が一番怖いなと思った瞬間でした、この階段を越えれば樹林帯はすぐそこです。
階段を降りて樹林帯へ、階段取り付きのところは傾斜がきつい。
さらに雪が吹き溜まっていて、場合によっては雪崩になってもおかしくない場所でした。
長居は無用です、周囲の雪面を見ても細かい雪が転がった後が多い。
落石も多い場所だと思うので早く抜けてしまいました。
樹林帯に入り阿弥陀岳の雄姿もこれで見納めです、次見るときは行者小屋から。
それまでグッバイ阿弥陀岳や!
地蔵尾根の樹林帯部分から見ると赤岳、中岳、阿弥陀岳は壁のようです。
魔王城のような風格が出ていてなんとも恐ろしい景色でした。
樹林帯に入れば一安心です、小屋まで一目散に降りて行きます。
雪山の下山って夏よりも歩きやすいので速度が出ます。
雪のコンディションがいいと本当に歩きやすくて好き。
樹林の中に入る頃には空も晴れ上がったのか、強い西日が差し込んでくるようになりました。
逆光で映る樹林帯はまるで水墨画のような景色。
真上を見れば清々しい気持ちになる、青い空に真っ白な木々。
雪の森というにふさわしい、美しい世界を堪能することができました。
6.下山、アイスキャンディと林道歩き
午後1時20分、行者小屋到着。
地蔵尾根の降下開始から50分、ようやく行者小屋まで帰って来ました。
朝とは違い燦々と太陽が降り注ぎ、真っ白な雪がキラキラと輝く気持ちのいい景色が広がります。
「はぁ……疲れた……」
行者小屋で少し休憩したら赤岳鉱泉に向かいます、時間的にはコースタイム通りくらい
ちゃんと日没前に駐車場に戻ることができそうです。
顔を上げて気がついたのですが、なんて気持ちの良さそうなテント場なんだここは。
こういうところで、女の子と、雪玉投げあって、JR SKISKIしたい。
若い時にそういう経験を積んでおけばよかったと思う一コマでした。
さて、元気を取り戻して赤岳鉱泉へ向かいます。
このまま行者小屋から降りれば早いんだけど
折角なので俺はアイスキャンディの宿を選ぶぜ!こうしてRSは赤岳鉱泉へ向かった。
行者小屋から赤岳鉱泉までは一山越える感じです、すでに体が下山モードなので
登り返しは精神的にうんざりするものがありましたが、無心で体を動かします。
午後1時45分、赤岳鉱泉アイスキャンディ。
赤岳鉱泉に着くと賑やかな雰囲気が漂い、アイスキャンディを登るクライマーの方々が
真剣な面持ちで氷と向き合っていました。
アイスキャンディは思っていたよりもかなり大きくて驚きました、登るの大変そう。
アイスキャンディーも見たので、北沢を通って八ヶ岳山荘まで下山します。
そう、すっかり皆さんも忘れてると思いますが、車は美濃戸の八ヶ岳山荘です。
いつもより遠くに車があるのでここから先は頑張って巻けるように歩くしかありません。
歩いて見た感じ南沢よりも北沢の方が歩きやすいですね、積雪が多くてもこっちは問題なさそう。
川底が赤く染まった川の上に通された橋を渡り下山して行きます。
行きの南沢に対してかなりの歩きやすさ、今度からこっちルートで登ろうかな。
午後2時25分、林道合流地点。
登山道と林道が合流する地点まで来ました、
この先は林道歩きになるためもっと歩きやすくなります。
林道は道が広く雪も少ない、南沢の登山道を使うよりもかなり快適に歩けました。
朝もこっちから登ればよかったかなと思わされる。
歩いたことのある方ならご存知かと思いますが、こちらの林道スケートリンク化します。
夏に林道脇を川が流れている地点が凍るといえばわかるだろうか。
札幌の交差点とおんなじくらい滑る楽しい道が出来上がっているので、
チェーンスパイクがあると安心ではないかなと思います。
随分と綺麗な氷で、青氷に近しい綺麗な色合いでした。
上を歩くとツルツルなので危険、雪がしっかり積もった吹き溜まりの上を歩いてやり過ごす。
午後3時00分、美濃戸山荘到着。
長かった赤岳日帰り登山も終わりを迎えようとしています。
夏に歩いた赤岳阿弥陀岳登山では午後2時30分にここに着きましたが
冬はトレースをいただいたとしても夏よりは全然時間がかかるものですね。
さて、美濃戸山荘と赤岳山荘をすり抜けて林道歩きに入りました。
八ヶ岳山荘までの林道はお昼の昇温で雪が溶け、地面はベチャベチャの泥まみれに。
林道を歩き続けて靴を汚すのも嫌だったのですぐに登山道に入り、
駆け下りるようにして下山しました。
時折聞こえるチェーン装備の車の走行音が羨ましく思えた下山でした。
午後3時45分、八ヶ岳山荘到着。
なんとか日没前に下山しました、やりきった感よりも空腹が最大化されていたので
八ヶ岳山荘で風呂に入ってご飯を食べて帰ることにしました。
いい温泉を探してそこに行ってもいいんだけど、下山後即温泉という悪魔の囁きには勝てない。
こじんまりとした普通の温泉なんだけども、冷え切った体を速攻で温めてくれるやさしさ。
そういった気持ちをこの八ヶ岳山荘からは感じるわけです。
ただ、ちょっと狭いので他の客との無言の時間が続くと気まずい。
温泉から上がった後は特製カレーを食べて帰りの元気を養いました。
食べ物を注文するとコーヒーが一杯無料になるなどのサービスもあり
一時間近く八ヶ岳山荘でのんびりと過ごしてしまい、帰る頃には日が暮れていたとさ。
7.まとめ
冬の赤岳登山の感想
雑誌やヤマケイで雪山デビューとして取り上げられていることもありますが
間違っても初心者が登れるような山ではないし、一般的なハイカーが登れる雪山では
一番難易度が高いクラスに位置しているのではないでしょうか。
登る際は入念な下調べを行い、実力と照らし合わせて決断するのが大事かなと思います。
今回は天気も安定しており、晴れた空の下で雪をまとった赤岳を見ることができました。
夏、秋、冬と続けて登って来た赤岳ですが、何回でも登れる山だなと思います。
個人的には文三郎を登りきった地点から見る景色が好きです。
晴れていれば南アルプスがくっきり見えており、手前の岩の荒々しい景色も相まって
非日常的な景色に胸の鼓動が高まって行くのを感じます。
美しい白と黒と青のコントラストが織りなす冬の八ヶ岳。
権現岳、天狗岳、硫黄岳、蓼科山と歩いて来ましたが、赤岳は集大成でした。
次回は是非とも天望荘に宿泊で訪れ、朝焼けや夕焼けをみてみたいものです。
人生最高の山は続く。
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