【南アルプス】鳳凰三山、白き稜線と奇岩に彩られた白亜の山の旅
2017年9月24日、南アルプスは鳳凰三山へ行ってきました、
標高は最高峰観音岳が2,841m、オベリクスクのある地蔵岳が2,764m、
山荘のある薬師岳は2,780mとなっています。
南アルプスでは最も甲府側に位置する山で、
その稜線の美しさから南アルプスデビュー等に最適の山として
登山雑誌などで紹介されることの多い山です。
非常に人気の山であるため、あらゆるコースレポートが存在する鳳凰三山。
この山はデビューに最適と謳われますが、
なぜデビューに最適なのかという理由をよく理解しなくては痛い目を見ます。
稜線の美しさ、景色の良さがこの山の特徴であって、決してコースが優しい山ではないのです。
普段1泊2日で歩かれるであろう鳳凰三山を今回は日帰りで挑戦します、
久々の合計登山時間10時間超えの日帰り登山の始まりです。
鳳凰三山について
鳳凰三山と呼ばれたり鳳凰山と呼ばれたりしますが、今回の記事では鳳凰三山で進んでいきます。
この山は地蔵岳、観音岳、薬師岳の3つのピークをまとめて一つとして扱っている山です。
オベリスクと呼ばれる特徴的な岩は地蔵岳に、最高峰は観音岳に、奇岩と白砂の大地は薬師岳と
それぞれのピークが特徴的な見た目を持っているのがこの山のポイントでしょう。
3つの山を通して最大の特徴といえるのは稜線の白い砂地、
甲斐駒ケ岳もびっくりのビーチみたいな白砂の稜線が三山を通して続きます。
今回は日帰り+車ということで周回登山が可能なコースでは最も一般的である
青木鉱泉→ドンドコ沢→鳳凰三山→中道登山道→青木鉱泉というコースを歩きます。
ドンドコ沢は名前の通り沢沿いを登るコースですが、かなりのタフコース。
しかも大して滝が見えるわけじゃねぇ!
歩くのにはかなりの体力を必要とします、更に中道コースは人によってはトラウマ級の道。
奥秩父のような同じ景色の繰り返しと途中のトレースの薄さ、
単調なのに降りコースタイム3時間20分という悪夢が待ち構えています。
できることならば、夜叉神峠から稜線を歩き続け、
薬師岳で一泊し御座石温泉へと降りるコースがこの山の一番楽しめるコースなのでしょう。
1.鳳凰三山日帰り登山に関して
鳳凰三山青木鉱泉へのアクセス
公共交通機関
【電車】新宿→韮崎 2,590円/4,940円(普通電車/あずさ)
【バス】韮崎→青木鉱泉 1,700円
片道合計 4,290円/6,640円(普通電車/あずさ)
公共交通機関を利用して東京からアクセスする場合は1泊2日前提になるかと思われます。
公共交通機関の場合は下山は青木鉱泉でもいいし、夜叉神峠まで行ってもよしです。
車
【高速】浦和南→韮崎 3,680円/5,060円(ETC/通常)
往復合計 7,360円/10120円+ガソリン代4,000円くらい
青木鉱泉に行くまでの道にはダートがあります、パンクしないように注意。
鳳凰三山日帰りのコースタイム
青木鉱泉5:45→南精進ヶ滝7:05→地蔵小屋9:50→地蔵岳10:55-11:25→
観音岳13:00-13:40→薬師岳13:55→御座石14:40→林道合流地点16:35→青木鉱泉17:10
合計登山時間 11時間25分(標準コースタイム 13時間5分)
後半の中道下山道はオススメできない下山路でした。
この登山で使用したお金
高速往路 3,680円
高速往路 3,680円
ガス代 3,660円
駐車料金 1000円
バッジ1つ 600円
ベルガの湯入浴料 820円
夕食代 750円
水 600円
行動食 900円
コーラ 250円
合計金額 16,020円 やっぱりアルプスは高い。
飲料の値段は割と良心的です。
この登山で使用したカメラ
2.標高差3,000mを超越する健脚登山の始まり
2017年9月24日午前3時5分、談合坂サービスエリア。
9月は中央道を走ることが多く、談合坂でよく朝ごはんを食べた月でもありました。
写真を撮り忘れてけどもこの日ももちろんスタ丼を食べて登山を開始します。
やっぱり登山の日の朝はスタ丼だぜ。
午前5時45分、青木鉱泉駐車場。
青木鉱泉までの道はダートもありなかなかスリリングなドライブとなりました、
ていうか南アルプスの林道はやっぱり怖い場所です。
東北の山々もびっくりするようなコンディションの林道。
しかし何よりもキツイのは林道慣れしたベテラン登山者の運転するSUVが
後から猛烈な勢いで追い上げてくる事だろう。
青木鉱泉ってこんな建物、日本家屋風の立派なお宿でした。
トイレをお借りしたんですけどもとても綺麗に掃除の行き届いた和式のトイレでした。
洋式トイレじゃないと嫌という方は注意しましょう。
駐車料金1,000円を支払い車に戻ったりなんだりして準備を整える……、
青木鉱泉には自販機がありコーラがあるのは確認。
下山時の勝どきの準備は整っているということか。
午前5時45分、ドンドコ沢登山道より登山開始。
タフコースと聞くドンドコ沢、オベリスクから薬師岳まで
鳳凰三山の核心部へ向かう登山の始まりです。
すんごい野性的な樹林帯が続きます、ヘビイチゴの類があらゆるところに……。
Q.南アルプスの登山口といえば?
A.標高が低い!
北アとかに比べると登山口の標高が低いことの多い南アルプス、
このドンドコ沢の登山口もそこまで高いところではありません。
その為樹林帯はまぁ濃ゆい……。
青木鉱泉の標高は1,090m、地蔵岳の標高は2,764m。
つまり標高差1,600mほどをまずは登ることとなります、これは広河原→北岳に匹敵します。
累計の標高差で簡単に3,000mを超越する鳳凰三山戦、開戦である。
林業の方なのかな、出迎えの看板を作ってくれてました、ここは小武川っていうのか。
川の周辺は改良工事を行っているらしく、迂回路を利用して登っていかなくてはなりません。
橋がかけられていますがなかなか橋が低い、流されたりしないのか心配ですね。
登山道は最初はずーっとこの有様、深いというか……荒れてるって言ったほうが……。
緑が濃ゆい、山頂では紅葉が始まったというのに下はこんなにも緑色です。
もうなんていうか奥多摩とかと同じような景色。
水の山南アルプス、ドンドコ沢という名前の通り登山道のいたる所に沢が現れます。
中継地点も軒並み滝、水と共に歩む山ですね。
南精進ヶ滝を目指します
指導標はしっかりしており、変に全ての滝を目指さない限りは普通に登れるかと。
場所によっては少し登山道から離れないといけない滝があるので注意。
午前7時5分、南精進ヶ滝到着。
ドンドコ沢コースで滝を見れる場所は軒並み主道から脇道へ逸れる感じです。
南精精進ヶ滝ですが一本滝が勢い良く吹き出しており、見た目はしっかりとしているものでした。
水がジャバジャバと流れる登山道を黙って登る。
スタートから結構時間が流れていますが、時の流れを微塵も感じさせない景色が続く。
それと、あんなに車が泊まっていたのに全然人がいない、どういうことなんだ。
道が荒れ気味なんでケルンが所々に積まれています、八ヶ岳とかに比べると全然歩きにくいです。
これくらいの小川の渡渉が何回か出現します。
足首上まである登山靴なら余裕で渡れますが、踝までのシューズだとちょっと厳しいかも。
あらゆる状況に対応するということを考えると
やっぱりハイカットの登山靴がいいよなーと思います。
最近トレイルランニング用のシューズで歩く方をよく見ます
足首が強くないと挫きそうで僕はできないなとおもってしまう。
標高がジリジリと上がってきたため、景色も少しずつ変わってくる。
苔が多くなり木々も山っぽくなってきた。
倒木に苔がびっしりと、苔が生えるくらいだから何年もこの姿で放置されていたのだろうか?
午前7時30分、鳳凰の滝と地蔵岳方面の分岐。
この分岐で鳳凰の滝方面はおすすめしません。
鳳凰の滝自体そんなにいいものではないし、道がわかりにくく滑落の危険もある場所です。
基本的に登山道中のスポットはすべて回収する事を心がけているので今回は歩いてみることに。
最初は明瞭なトレースがあるが……、ここから先は高巻きと降りに別れており、
獣道風な感じになりました。
ヤブを抜けると滝直下に……鳳凰の滝は奥にあるのですが
登っていく道が見当たらない、最近の悪天続きで道が全然わかりません。
3分ほど考えた結果、危ないから戻ることにしました。
地蔵岳へ急ぎます、樹林の中にいて気が付かなかったけど
雲がすごい速度で上がってきているようでした。
目まぐるしく木漏れ日の強さが変わる樹林帯を必死で登ります。
歩いてみて思ったのですが、高原地図のコースタイムは少し優し目でつけているようです。
普通に歩いていたら結構早く歩けました。
標高が上がると岩とかも増えてくる。
白糸の滝、よくある名前の滝です。
こちらは展望台が登山道の中継地点にあるため絶対に見ることができる滝となっております。
これが白糸の滝、ズームレンズがないと全然見えないやつでした。
ドンドコ沢の滝で日向山の滝の様な絶景はなかなか撮影しづらいものがある。
登山道のコンディションは結構きっつい、初心者にはあまりおすすめできない。
上りの斜度も結構きついし距離も長い。
日帰りでこのコースを歩く場合、標高差は単純計算で3,000mくらい。
しかも稜線でアップダウンをお見舞いされる。
北岳日帰りと距離、標高差が数値的には似たようなコースであるため覚悟が必要だろう。
標高がそれなりに上がってきて森の様子も変わってきた、
表面の白い木々と苔に覆われた森が広がる、僕にとってはこれは奥秩父的な景色と思っている。
ピンクテープではなくて赤ペンキの印が目立つ、
傾斜もゆるくなりだいぶ歩きやすい森が続くエリアだった。
スタートからこの森を歩ければどんなに幸せなことかと思うのですが。
こんなところにキノコが生えるなんて珍しい、
数年前の大量発生時みたいな大群生がまた見てみたいものです。
午前9時30分、鳳凰小屋前中継地点到着。
地蔵小屋手前で一旦天国地帯に突入、天空の庭園と言うに相応しい
優しいスポットなのでゆっくり歩きたいですね。
鳳凰三山の一角、地蔵岳がキリリとした表情で姿を表します。
オベリスクが天に向かって突き上がる、あれは確かにかっこいいけども。
辺りには清涼な水が滾々と流れており、水の山という言葉がよく似合う景色が広がっている。
ガスってるけど、このピークの向こう側は観音岳とかなんですかね、
ガスが順調に上がってきていてとても不安にかられる。
印に従い地蔵小屋を目指します。
倒木が多いですけど道はしっかりしているので、迷うことはないかと思います。
明瞭な道を歩き続ければ地蔵小屋はもうすぐ……なはず。
もうすぐと言い聞かせて結構歩いた。
3.天国へ昇天する坂を乗り越え鳳凰三山のシンボル、オベリスクへ
午前9時50分、地蔵小屋到着。
先行していた登山客の方々と小屋の方が仲良く談笑している小屋に到着しました。
アットホームな雰囲気のある小屋です、地蔵小屋といえばブログを定期的に更新していたり
情報発信が多く、いつかは実際に見てみたいと思っていた小屋でした。
お腹のすき具合などを考えると特に何か食べたいわけでもなかったので、バッジだけを購入。
水はこちらの洗面所の所からジャバジャバと湧き出ています。
天気が良かったからか食器が軒先に干されていたり、生活感がすごい出ている小屋でした。
小屋の主人の方も気さくで、山頂の様子などを談笑して小休憩することができました。
地蔵小屋を出発して地蔵岳山頂を目指します。
小屋の上に待ち受ける最後の急登スポットのキツさを
この時はそこまでやばい場所だとは認識しておらず、このあとひどい目に会います。
まずは普通に樹林を抜ける。
午前10時30分、天国に見える地獄のビーチ歩きスタート。
森が明るくなり地面が砂地に変わったら最後の登りが始まります。
はじめてこの景色を見る方ならテンションが上がるでしょう、
山の上に来て白砂のビーチが広がるなんて……。
青空が海のように見える天空のビーチ、
しかし景色とは裏腹に圧倒的に歩きにくい場所でもあるのです。
地面にトレースはあるものの、砂の影響で踏み固められているとは言い難い。
雪の中を歩いているような気分。
空がまだ青いうちに山頂にたどり着きたい。
景色だけは最高ですが、歩いてみるとめちゃくちゃきつい、日向山でも同じ経験をしましたが
地蔵岳はこれまでの登り分体力を使っているため、更にきついわけです。
まばらな木々のお陰で木漏れ日も明るく、本当にビーチの中を歩いているような気分です。
一歩二歩と登りますが、砂地であるため少し足が沈み込んで思うように体が前に進みません。
そしてハイカットの登山靴じゃないと砂が靴に入ってかなり辛い事でしょう。
紅葉が始まった木々を横目に必死で登る。
顔には汗がにじみ、更には苦悶の表情を浮かべていました。
この時だけは疲れで頭がアホになるかと。
幸いだったのは前を見れば青空があること、
これで曇ってたら一時間ほど休んで下山していたと思う。
ガスに包まれる観音岳方面、眺めつつも心の中では
「知るかバカ! そんなことよりも地蔵岳だ!」
景色はいいけど体力的に本当にこの坂きついんです。
この白砂の大地では倒木は皆流木のような姿になってしまいます。
紅葉で木々が黄色い、青空の色と相まって爽快感のある景色だ。
まだ色づきが浅いけれども、南アルプスの秋の始まりをこの目に収めることができた。
午前10時55分、地蔵岳到着。
地蔵岳山頂には指導標がありません、いやあるのかもしれないけど探した感じ何もない。
お地蔵様と鉄製の櫓があるだけで、基本的にはオベリスク直下が山頂という認識。
地蔵岳の山頂を見回せば多くのお地蔵様を見つけることが出来るでしょう。
残念ながらオベリスクを覆い隠すように雲がかかってしまいました、
オベリスクも僕が登れるような代物には見えないし。
今日は日帰り周回登山、ここであれに登ると後々キツそうなので遠慮しておきます。
みんなオベリスクの直下まで登って行きます。
僕は体力的に今登るとそのまま帰れなくなりそうなので遠慮します。
4.果てなき稜線の先、鳳凰三山最高峰へ至る
次なる目的地は観音岳、地蔵岳からは降ってから登ってというアップダウンが待っている。
向こうもガスの中に隠れてしまったようです……、ガスの中で歩くのは性能2割減なんでキツイ。
白砂の稜線を歩き観音岳へ出発する。
オベリスクから少し下ると大量のお地蔵様スポットへ、
平坦な砂地が広がっているため休憩にはちょうどいいですね。
観音岳へはハイマツ帯を抜けていきます、人が歩いている割には歩きにくい。
道もそこまで太くはない。
真上の空だけが常に青空、紅葉とのコントラストだけが救いです。
鮮やかに染まる木々で心を休めつつ先に進みます。
晴れているように見えますが、晴れている部分を撮影しているだけで
実際は高濃度ガスに覆われています。
稜線は白砂と花崗岩でめちゃくちゃ綺麗、稜線の美しさは凄まじいものがある。
単純に地面の美しさで言ったら今まで登った山では一番です。
この日の南アルプスはご覧のような感じで、
鳳凰三山と北岳、仙丈ヶ岳の間の谷間から次々と雲が湧き上がり
鳳凰三山からは南アルプス本体を見ることができない状態でした、なんとも悔しい限りです。
観音岳までは地味に遠い、コースタイムを見ればわかりますが結構アップダウンを繰り返します。
砂地の足元がちょっとばかし滑りやすいのも注意点。
青空が見えれば最高の景色が広がることでしょう、晴れてはいるけども展望がもっとほしい。
あがったと思ったらまたすぐに降る……マジで足にくる。
さすが南アルプス、登山道の厳しさは北アルプスよりも激しいものがあります。
激しめの登山が好きな方には南アルプスはオススメですッ!!
ガスの向こうに見えるのが観音岳かなぁと何度も考えながら進みます、
山頂みたいなやつが次から次へと現れるパターン。
この盆栽みたいな松が現れたら山頂はだいぶ近づいて来た証拠です。
下から見上げると山頂までは結構ありますね……、鳳凰三山の稜線歩きは中々にタフ。
体力的に結構しんどい状態の僕を子供が走って抜かしていきます。
若さっていいですね、僕も大学入学前くらいに戻りたいんですけど。
お父さんらしき方もすごい速度で歩いていく、親子登山って憧れる。
後ろを振り返ると地蔵岳が消えていた、地蔵岳はガスの中、そして伝説へ。
後ろばかり振り返っても仕方がない、時は前にしか進まないのだから。
といったわけのわからないことを言い聞かせて観音岳へ向かいます。
青空と少しばかり始まった紅葉がまぶしいぜッ!!
山頂から見下ろす黄色い木々は非常に美しい、このモコモコした紅葉が非常に良い。
観音岳山頂から続く斜面は見事に黄色に染まっていた。
紅葉初期であるためウラシマツツジの赤がすごい目立つ。
紅葉時期は赤、黄色、青とカラフルな景色が気持ち良い。
岩場が多いのですが、ペイントによりルートはしっかりとわかる。
樹林と白砂の大地の景色が交互に目の前を通り過ぎてゆく。
地蔵岳から観音岳の登りは景色の変化が多く、立ち止まって写真を撮ってしまう。
午後1時00分、観音岳山頂。
地蔵岳でぐったりしていた時間もあったのですが、観音岳まで2時間かかりました、遠いわッ!
ここが鳳凰三山の最高峰観音岳、周りは青空と花崗岩の美しい景色が広がります。
三角点にはお賽銭が置いてありました、白い岩のなかで目立たずぽんっと置いてあります。
晴れてるんだけど周りは雲だから全然展望がない。
ダッフィー、曇りですッ!!
この観音岳からの景色は何としても、何か収穫が欲しい!!
そう思い今までのコースタイム、一応巻いている分を全てこの観音岳に置いていくことに。
山頂で雲が晴れるまで待機し続ける勝負が今始まるッ!!
そして山頂からちらっと見える仙丈ヶ岳をなんとか収めることができました。
観音岳から見るオベリスク、これがどうしても見たくて待っていた。
白砂の稜線の向こうにすらっと立つオベリスク、素晴らしい景色です。
こんなに白くて綺麗な稜線見たことないぞというくらい独特な山頂の景色でした。
谷間から上がってくるガスに巻かれるオベリスク、凄まじい速度でガスは空へ消えてゆく。
仙丈ヶ岳、北岳方面は鳳凰三山よりは天気がましだったようで
向こうはまだ晴れているようでした、周りの雲のおかげで山座同定できない中
なんとなくこれは仙丈ヶ岳だよなと思いカメラを向けていました。
鳳凰三山直下は紅葉で黄色く染まった木々が斜面を覆い尽くしています。
うーん??さっき下から見た方が黄色かったぞ。
上から見ると圧縮されてしまってあんまり綺麗に見えず残念。
何はともあれ太陽光がある状態で紅葉に立ち会えたことはとてもよかった。
午後1時35分、薬師岳へ移動開始。
下山にかかる時間を考えるとここが限界です、薬師岳から中道を利用して下山します。
5.天国の回廊を抜け巨岩と白砂の楽園、薬師岳へ
薬師岳方面はもちろん白い、ヘヴンリーロードを下るぜッ!!といった感じ。
稜線で最も歩いてて楽しかったのはこの観音岳→薬師岳間だろう、登山道の景色が良い。
地蔵岳から観音岳に比べるとこちらは歩きやすく景色が非常に優しい。
晴れていればめちゃくちゃ楽しいでしょうねここ。
歩き続けていると願いを受け止めたかのように現れる青空。
そのまま雲が標高1,000mくらいのところまで下がってくれないかな。
黄色と赤と青、今日の色はこの三色だと思う。
甲府側は緑のハイマツに覆われ、西の北岳側は白砂と花崗岩の大地が広がる。
稜線を境にパキッと景色が分かれているのが鳳凰三山。
観音岳方面を振り返る。
「おい、晴れてんじゃねーかッ!!」
下山したら晴れるこの現象、一体なんなんでしょうね?
薬師岳が近づいてくると薬師岳の奇岩がたくさん見えてくる。
漫画スプリガンの最終巻付近で特殊部隊cosmosがこの辺の要石爆破しまくってたのを思い出した。
山にまで来て思い出すことが漫画な30代です。
午後1時55分、薬師岳山頂。
観音岳から歩くとすごくスムーズに薬師岳に到着することができます。
短い区間だけれども歩いてて楽しいし、もっと距離があればいいのにと思う場所です。
薬師岳には新築になったばかりの小屋があります、薬師岳小屋の目の前には
登りがいのある岩場もあるし……、次回は何としてもここに泊まりに来なくては。
薬師岳山頂には人っ子一人おらず、青空と巨岩が転がるだけ。
とても寂しい景色の中一人佇んで「こういう雰囲気のPVあるな……」などと
考え事をしていたのですが、すぐに時計が2時を知らせてくれたので下山に取り掛かります。
ペイントに従っておりましょう、青木と書いてある印の先が中道登山道です。
6.中道登山道、精神を試される長き道へ
甲府側は白砂の大地ではなくて、いつもの奥秩父的な登山道。
さらば鳳凰三山、短い夢を見させてもらった。
次回来る時は夜叉神峠からの縦走にさせていただきます。
下山直後からハイマツトンネルをお見舞いされる、中道登山道はスタートからきつい。
最初はこういった奥秩父的な道を歩く、気持ちいけど斜度がないので全然標高が落ちない。
ダケカンバとか綺麗だねーと言いながら歩く道はそんなに悪くない。
木々の紅葉はまだ始まったばかりといったところか。
赤が少なかった鳳凰三山、ナナカマドの紅葉などをなかなか見る機会が少なかった。
そして黄金の紅葉の木々は通り過ぎ、深淵の下山が始まる。
「奥多摩かここは、なんで南アルプスまで来て奥多摩みたいな……」
としょっちゅうdisの対象になる奥多摩さんのような道がここで始まる。
ペイントをしっかり見ていない簡単に道を間違えるようなコースです、
本当に森が深いので心の底から注意して歩こう。
午後2時40分、御座石。
中道登山道は一人で歩くようなもんじゃない、怖い。
コース自体は長い、暗い、斜度がいきなり急、長いといった感じ、長いが2回入るくらい長い。
周回コースをオススメできない真の理由はドンドコ沢と中道登山道という
罰ゲーム級の道を二回も、それも標高差1,500m越えのものを歩かされることにある。
すれ違う人がほとんどいない中、必死で降り続ける。
途中で出会った方々は皆刑罰を受けているような表情を浮かべていた。
膝が弱い人はここを降りれば確実に膝をぶっ壊して途中リタイアだろう
しかし、この下山道は途中に小屋なんてものはない、3時間以上降り続けなくてはならない。
同じような景色がずーっとつづく、暗いし雰囲気悪い。
象のような切り株、暗い樹林の中では時折動物のような切り株とかが現れる。
疲れてるとそれらを生き物と錯覚してしまい驚くこともある。
笹と樹林がひたすら続く、コースの辛さでいうと黒戸尾根よりきつく感じる。
笹原が広がる地点はまだマシだが、すぐに下樹林へ。
休憩するなら笹原が現れた瞬間が良い。
この有無を言わさぬ圧倒的な落葉松樹林が広がってから勝負である。
その辺に熊でも出そうな薄暗い雰囲気の中を降り続ける。
足元は笹の根と木の根でとても滑りやすい、やはりこれは罰ゲームを超えた刑罰……。
正体不明の生き物みたいな切り株もたくさん、今にも動き出しそうな感じがある。
降り続けるとところどころ作業用の林道が現れたりする。
指導標をちゃんと見ないと変なところに入りそうになるので注意したい。
だいぶ標高が下がった先、このような景色が見えてからが本番といってもいい。
林業用道路と登山道が交錯してめちゃくちゃ歩きにくい。
登山道は踏み固められており幅も広い、林業用は道が細いという違いはあるけど
歩いているとそんなの全然わかんないと思う。
谷底みたいなところまで降りてきたらようやく一安心、あとは青木鉱泉へ向かうだけだ。
午後4時35分、中道登山道入り口。
めちゃくちゃ辛かった、なんなのこの登山道……。
僕が今まで登った下山道でもトムラウシに匹敵する下山の辛みがあった、もう二度とあるかない。
登山道入り口付近にはホラーな廃墟が……。
なんで南アルプスってこういう怖い感じがあるんだろう?
僕やっぱり北アルプスの方が好きです!!
下山後も青木鉱泉まではスパルタンな林道歩きが続く。
むしろ林道が長い、地図上では35分と書かれているが絶対それ以上長い。
中道登山道で足が完全に破壊されている上で歩くのだからなおさら辛い。
しかし、地獄に仏はいた。
蜘蛛の糸(デリカD5)をもった仏様が通りかかり、「にいちゃん乗ってく?」と
救いの手を差し伸べてくれたのだ!!
僕は脊髄反射で「よろしくお願い申した」と返し青木鉱泉まで乗せてもらいました。
最後に助けてくれる人がいなかったら青木鉱泉手前で力尽きてのたれ死んでいたことでしょう。
午後5時10分、青木鉱泉。
無事帰ってこれた青木鉱泉、すげーーーー長く感じた登山でした。
一人でこれだけの距離を歩いたのは久々です、それもあってなおのこと辛く感じた登山でした。
青木鉱泉で帰りを待っていてくれた自販機、もちろんコーラを注文。
下山後は本当にコーラが美味しい……。
登山の疲れを癒してくれる炭酸が脳天へ突き抜けます、
非常に大変だったこの山を乗り切れて本当に良かった。
下山後どこでお風呂に入るか迷ったのですが、新しい場所に行く気力がなく。
知っているところで確実に温泉に入りたいという思考が働き尾白の湯へ。
ここは甲斐駒ヶ岳黒戸尾根や日向山登山の時に使用した温泉です。
設備が非常によく整っており、食事含めてすべて賄うことができます。
温泉で綺麗さっぱり今日の疲れを癒した後は牛乳を一杯。
尾白の湯のいいところは八ヶ岳高原牛乳が飲めるところか、地産の牛乳って本当に美味しい。
お風呂の後はご飯、東京まで体力が持たないと判断したため尾白の湯でご飯を食べることに。
尾白の湯は様々なメニューがあるのですが、日向丼が手軽でオススメです。
7.まとめ
鳳凰三山は絶対に日帰りで登るべき山ではない。
鳳凰三山はめちゃくちゃいい山です、そしてとても厳しい山でもあります。
ここを日帰りで登る人は多くいますが、誰でも日帰りで歩ける場所ではありませんん。
そして何より日帰りで歩くにはもったいない場所です。
山頂の稜線は泊まりで歩いてゆっくりと楽しむ価値があります。
南アルプスの前衛ということで晴れていれば白峰三山も綺麗に見えることでしょう。
決して早く歩ければいいものではない、ということを教えてくれる山となりました。
百名山の中でも特徴的な稜線、山の美しさは百名山の中でも際立っている山です。
山として美しく、楽しさに満ち溢れている鳳凰三山。
登山の際は是非とも夜叉神峠から薬師岳小屋、そして御座石温泉への縦走で楽しみたいものです。
本当に辛かったけれどもまた行きたいですね。
人生最高の山は続く。
鳳凰三山の地図はこちら
アルペンガイド10 南アルプス (ヤマケイ・アルペンガイド)
- 作者: 中西俊明・山下春樹
- 出版社/メーカー: 山と溪谷社
- 発売日: 2009/06/25
- メディア: 単行本
- クリック: 6回
- この商品を含むブログを見る
北アルプスに比べるとやはり南はハードです、ていうか人がいません。
この登山で役に立ったアイテム
行動食を大量に消費しました、後半吐き気を催すような邪悪な下山道に胃をやられるかと
思いましたが、ドライパイナップルならなんとか食べることができました。
SLIK 三脚 スプリント MINI II GM N 4段 旅行用三脚 106556
- 出版社/メーカー: スリック
- 発売日: 2012/10/26
- メディア: Camera
- この商品を含むブログを見る
軽量三脚を持って行きました、これより重いともう担げません……。
Platypus(プラティパス) アウトドア 給水用 ボトル プラティ 容量2L 25601 【日本正規品】
- 出版社/メーカー: Platypus(プラティパス)
- 発売日: 2011/03/08
- メディア: スポーツ用品
- 購入: 4人 クリック: 12回
- この商品を含むブログ (1件) を見る
プラティパス必須です。
地蔵小屋から先は水を補給できるポイントは存在しません、夏場は水を汲んでおかないと
後半の下山で水がなくて絶望する可能性があります。
こちらの南アルプスの記事も是非ご覧ください。
みんな大好き甲斐駒ヶ岳黒戸尾根です、しんどいのが好きな方はこちら。